その後、多くの地域でさまざまなフルーツ魚が開発・販売されています。
私が開発した柚子ブリは鹿児島県東町漁協で一時期、生産・販売されていましたが、今は生産がストップしています。おそらく再開はないと思います。
次に開発したのが広島県大竹市阿多田島漁協のあたたハマチtoレモンです。
こちらは生産がおそらく続くのではないかと思います。
こんな状況ですが、試験的に細々とフルーツ魚の開発をしています。
ここ3年間、いろいろと試験的に生産をし、配付をして試食をして頂きました。
ご協力してくださった方、ありがとうございました。
分かったことは下記になります。
1. ユズの香りをかなり強くしないと分からない方は多い。
柚子ぶりについては下記の様だったと思います。
2020 かなり強めに調整
2021 前年より少し弱め
2022 さらに前年より少し弱め+飼料メーカー変更と飼料の脂質含量をup
年を追う毎に香りが分からなくなる方が多くなりました。個体差もあるので、あくまでも傾向です。
果汁の量で言うと、2022の果汁使用量は少ないです。さらに、魚も大きくなったため、飼料も脂質含量が多い物にしています。そのため、EP飼料があまり柚子果汁を吸ってくれないという事情もありました。結果として脂はのっているけど、果汁の香りが弱い仕上がりになっています。もう一つは、果汁のおりが少ない部分を使用することになったのも原因かと思います。おり=油脂成分であり、ここに柚子の香気成分が多く含まれています。
油脂の多い飼料ですと、香り付けにはちょっとユズの添加に工夫が必要そうです。対処法は東町の元生産者が開発してくれていますが。
2. マダイについては、ユズよりもへベ酢の方が美味しくなるかも?と思い、2022は添加する果汁をユズからへベスに変更しています。
2022のマダイ かなり好評でした。香りがわからない方も多かったのですが、味は良かったそうです。へべすはユズと比べると香りが弱く、相当な量を添加しても香りが付きにくいと感じました。なので、最後の5回くらいはユズ果汁をブレンドしています。あと、今年は身質もしっかりしていたと思います。身質については数ヶ月前からの給餌が重要なのかもしれません。今年は担当の学生がみっちり餌やりをやってくれました。
マダイ、ユズであろうがへベスであろうが、人気です。正直、ブリより人気があります。
3. カンパチでの香り付け
こちらも問題なくできることが分かりました。ユズとへベスだとどちらが良かったのかは好み次第かと思います。私はユズ多めのへベスブレンドが良いかなと感じています。
4. 柑橘果汁の添加について
概ね好評です。効果としては,下記になります。
・抗酸化作用(鮮度維持)
ブリの血合いなどは、しっかり血抜きをすれば10日くらいは変わりません。
・嫌な魚臭の低減
魚の嫌な臭いや飼料由来の臭いがマスキングされます。
・脂があってもなぜかさっぱり
この理由はわかりませんが、皆さんが仰ります。今年は特に飼料メーカーを変えたためか、脂の質がとても良い魚になりました。
・ほんのり柑橘
一部でユズはキツいかも?というコメントがありますが、それも調理次第とも仰っています。私もこれには同感です。わかりやすさで言うとやっぱりユズですね。へべすは白身と合うと思いました。
5. その他
・意外とブリの人気は低い
マダイ・カンパチの方が人気です。
・この魚で商売するのは難しい
売り方次第かと思います。回転寿司のように期間限定で売り切る様にするか、冷凍保存などが良いのかもしれません。それと、天然魚を好きな地域(高知県など)では、なかなか作っても売れないと思いました。
採算性を考えると、あきらかな柑橘香を付けるのは厳しそうです。となると、鮮度保持と魚臭のマスキング効果に焦点を絞ることになるかと思います。製品としては良い物とは思うのですが、それと商売は別です。どこかと大きくタイアップでもしないと生産は厳しそうです。
・今後はどうするの?
技術としてはほぼ完成しているかと思います。なので、後は研究室の関係者用に細々と作るようにしたいと思います。商売の観点からいうと、売れない物を作っても仕方がないですし。養殖について知る良い機会にはなるので、教育向けに生産は続けます。
私としては、養殖魚の味は飼い方でこれだけ変化することを実感して貰えたことが良かったのでは?と思っています。野菜でもなんでも、美味しいには訳がある。そしてそれには金がかかるってことです。
商売の世界は難しい。良かれと思って提案しても、バランスの問題で却下されることも多いです。私はこのフルーツ魚の販売を通して、業界を学べたのが一番大きな成果だと思っています。
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