増肉係数で何がわかるか?

勉強の続きです。
【ブログを通して、あるところの職員や春休みの学生達へ通信教育を試しています。】

補足事項も併せてお読み下さい。
http://kochifishnutrition.blogspot.jp/2016/05/blog-post.html



養殖の現場に行くと、研究分野とは少々言葉が変わります。
現場で良く聞く言葉は、「増肉(増体)」と「増肉係数」のような気がします。
似た言葉ですが、意味が違います。

増肉(増体)=どれだけ太ったか(体重が重くなったか)
増肉係数=魚が1kg太るのに必要だった餌の量 

現場では、たまに増肉係数の「係数」を省いて話す方もおり、話がかみ合わないこともありました。よく聞き取りをし、混同しないように注意しています。
研究室では、増肉係数も使いますが飼料効率という指標を良く使います

式で表すと

増肉係数=食べた餌の量(乾重) ÷ 増えた体重(湿重)

飼料効率(%)=100 x 増えた体重(湿重)÷ 食べた餌の量(乾重)

乾燥した重量と水分を含んだ重量を用いる計算なので、飼料効率ではしばしば100%を越える事があります。

今回は増肉係数を中心に話を進めます。

問題です。
増肉係数は、高い方が良いのか、低い方が良いのか?

N君の答えは、ちょうど良いのがいい!との答えでした。

これに飼料会社I氏は、N君の不勉強に怒るかと思いきや、大絶賛でした。
一般的な正解は「増肉係数は低い方が良い」です。間違えなく。

下記は代表的な増肉係数です。
水産白書ですとブリ(EP)の増肉係数は2.8くらいで、実際に現場で測定をしてみると2は難しいです。同様にサケ類は水産白書によると1.2-1.5くらいです。


引用:佐藤秀一 新しい水産養殖用飼料の開発 ―ベジタリアンフィッシュ養殖魚の生産をめざして― 食品と容器 2009.Vol.50 No.2
















この増肉係数から何を知ることができるかというと、生産に必要な餌の量と経費を知ることができます。

ブリ4000匹をEPで5kgまで育成するとし、増肉係数は2.8、餌単価は250円/kgとし、計算をしてみます。


必要な餌の量=ブリの数 × 出荷サイズ × 増肉係数 = 56 トン

必要な餌の経費=56トン × 餌単価 = 14,000,000円
ブリ1匹を仕上げるのに必要な餌の経費 =出荷サイズ× 増肉係数 × 餌単価 = 3,500円 

餌単価と出荷サイズを一緒として【実際は違います】、大西洋サケの増肉係数1.2で計算してみます。


必要な餌の量=24トン

必要な餌の経費=24トン × 餌単価 = 6,000,000円
1匹を仕上げるのに必要な餌の経費 = 1,500円

随分、必要な餌の量が減ります。つまり、生産者の餌にかける経費が少なくてすみます、が、飼料会社の儲け(売上げ)は減ってしまいます。これが飼料会社I氏がN君の答えを絶賛した理由です。


増肉係数では、上記の様なことを知ることができます。

生産側から言うと、増肉係数は低い方が良い!です。
ただ、生産も飼料会社も成り立つバランスも大事なので、社会的には「ちょうどいい」も間違いではないと思ったりします。

次回は、飼料価格と増肉コストを正しく理解するを予定しています。。 深田

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