柑橘系養殖魚(フルーツ魚の懸念点)

 最近は、柑橘を利用した養殖魚がフルーツ魚として話題になっています。ただ、使っている柑橘や生産方法がブランドによって異なりますので、当然、できあがった物がことなります。
 
私が心配している点は、下記になります。

1)柑橘の香りがすると思っている方が多いと思いますが、それはブランドによること。さらに出荷の形体やお店での提供までの時間にも影響されること。

柚子鰤王では、柚子の香りがすることを科学的に証明しております。他のブランドでも証明されているケースがあります。
 
ただ、出荷前の餌抜きの時間が長かったり、消費者に提供される時間が長くなると、香り成分は揮発したり代謝され、無くなってしまうようです。

柚子鰤王は餌抜きの時間まで検討しております。そして、現時点ではお客様に提供できるまで香りが付加されていないので、提供を開始していません。
他のブランドとはこの点が大きくことなります。

2)褐変抑制効果の過大評価について

これには私にも責任があります。

養殖魚の餌の種類には水分を多く含んだモイストペレット(MP)と、乾燥した状態のエクストルーデットペレット(EP)があります。大きな違いはMPには生魚と使うことと、配合設計を生産者ができることです。EPは飼料会社の研究成果の基にできあがっている物です。

一般的に、褐変はMPを給餌されたブリの方が早いです。なので、それに柑橘を入れると抗酸化物質がプラスされるので、褐変抑制効果が出やすいです。

では、EPではどうか?EPは鮮度維持まで計算して設計されているので、市販の良い商品を使うと柑橘の果汁を加えても、大して褐変する時間は変わりません。

つまり、もともとの市販EPがかなりこの点で優れているのです。抑制効果は、何と比較して優れているのか?という観点で判断ください。
 それでもユズ果汁を長期投与するとEP飼料に比べてさらに褐変抑制はされます。

3)果皮の添加方法について

ブリやカンパチは肉食【魚食】です。なので、植物の消化は得意ではありません。

Crest事業での柚子皮に関する研究では、柚子皮を添加することによって糞の排出量が増えない限度量まで検討しました。

実際、300g前後の魚だと柚子皮をペースト状にしたものであっても、餌1kgに対して100gの添加をすると糞の量が倍になり、海洋汚染を進めてしまう恐れがありました。なので、大きい魚はもっと許容量があると想像していますが、柚子皮の添加量は100g/kg未満で使うことを推奨しています。

さらに、柚子鰤王で用いている柚子皮は下記の点で他のフルーツ魚とは違います。
柚子皮は、細かくすり潰したペースト状になっています。
しかも果実が入っていたさのうやへたは取り除いてあり、魚の消化を妨げないように配慮しています。無農薬ロットしか使いません。(なので、少々お高いです)
乾燥品は効果が弱いので検討時点で却下しています。

テレビでの報道をみると、皮(へた付き、さのう入り)がMPにかなり大きな粒で混ぜられているようです(そうすると安くすみます)。

養殖業者にとって海は大事な場所であるはず。海を必要以上に汚すことが無いように添加方法を再検討してはどうでしょうか。

でないと、山で出た廃棄物の有効利用では無く、山で出たゴミを魚を通して海に捨てることになってしまいます。柑橘とブリのコラボは山と海を繋ぐ新しい組み合わせです。

今の時代は環境まで配慮した生産が大事と思うのですが、いかがでしょうか。

4)これが一過性のブームで終わること
一番、恐れているのはこれです。ブームが終わった後に本当の競争が始まると思います。良い製品を長く作り続けると結果としてブランドになるといった流れができれば良いなあと思っています。ブームが終わって、品質を落としたり、生産が中止になることが無い様に願うばかりです。

柚子鰤王は他の商品に比べると少々お高いです。良い物を作るためには、それなりのコストが必要です。食料生産において、安くて良い品というのは難しいです。

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