モジャコ考

どの養殖でも、スタートは稚魚の入手からはじまります。

ブリの場合、稚魚の入手は主に3パターンです。

春先:天然のモジャコ
春〜初夏:人工種苗モジャコ春仔
秋:人工種苗モジャコ秋仔 

マダイなどでは、おそらく100%、人工種苗です。
大西洋サケ・ギンザケなどの養殖も100%人工種苗です。
で、肝心のブリです。
昨年度の天然モジャコの採捕計画を見てみると、約2000万匹の種苗が必要とされています。
人工種苗の生産能力はそれほど高くないため、おそらくその1/10前後の生産能力くらいしかないと思います。
人工種苗がこれまで普及しなかった理由として、天然種苗を豊富に獲ることができて、かつ、それで収入を得ている漁師の方が少なからずいたこと。
そして人工種苗の品質がこれまではイマイチであったことがあげられます。

養殖の安定・計画生産の一歩は種苗の入手なんです。
そういった面で、ブリは種苗の時点からやや不安因子を持っている状態で養殖が行われてきました。
そして、今年です。
その、ブリの稚魚が獲れないのです。
恐らく現在でも希望に対する充足率は5割に達していないと思います。
現在、モジャコの漁期を延ばしたり、定置網に入った魚を買い上げたり、釣りで買い取ったりと、様々な手を尽くして天然モジャコがかき集められています。

個人的には人工種苗の生産を増やし、安定した種苗の入手を進めるしかないと考えています。しかしながら、供給社にも生産限界があるので、予約制になるそうだなと思っています。

多くの方が、日本は養殖の先進国と考えていると思います。
でも、実際は後進国となりつつあるパートも多いんです。
今年のモジャコ大不漁をきっかけとして、業界全体が変わらなければ、ブリ養殖のこの先はないだろうなとも感じています。となると、連鎖的に飼料会社や加工会社などもたいへんなことになります。実際、今年のモジャコ用飼料はほとんど売れていない模様。魚がいないのだから当たり前ですね。

何が言いたいかというと、
「困った時だけ人工種苗にすがるのではなく、定期的に人工種苗を購入しましょう!」ということです。
そうすることで種苗会社も安定した生産や改良を行うことができます。
今は過渡期と思いますが、数年後にはきっと良い種苗がでてくるはずです。

人工種苗(近大)


天然種苗(愛媛県産)

人工種苗【山崎技研】

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