増肉係数いろいろ

通信教育4

補足事項も併せてお読み下さい。



ブリの増肉係数は2.8
大西洋サケの増肉係数は1.2と水産白書には記されています。

この数字から何を読み取れるでしょうか?
大西洋サケはブリの約43%の餌で育てることができるということです。

どうして大西洋サケの増肉係数は低く、生産効率が良いのでしょうか?
何がブリと違うのか記してみます。

1) 種苗の差(大西洋サケは人工種苗、ブリはほとんどが天然種苗)
種苗の差は、サケ科魚類では選抜育種が進んでおり、早く育つ養殖に有用な形質をもった系群が作出されています。ブリでも少しずつ人工種苗が作られてきていますが、この点においてブリでは遅れがあるのは否めません。
2) 種の違い
種の違いは、一般的な手法ではどうすることもできないので、今回は割愛します。
3) 成熟年齢の違い
ブリは卵や精子を作り始めるのが、養殖環境下ではかなり早まります。餌をたくさんたべて大きくなるためです。卵等を作ってしまうと食べた栄養素の殆どが卵を作るために使われます。そして卵を産んでから体がもとに戻るまでにはかなりの時間が必要です。この期間の増肉係数は一般的に高く(悪く)なります。では、サケではどうでしょうか?一般的に養殖期間中にはほとんど卵や精子の発達が起きないようです。なので、餌が効率的に身になりやすいです。

ブリでも増肉係数が1くらいの時があります。数百gまでの大きさでしたら非常に効率良く成長します。2kgくらいまでのなら増肉係数2を下回ります。ただ、そんな大きさだとブリの特徴である脂もありませんし、何よりも食べる部分が少なくなります。

ブリやマダイを養殖対象種として生産を続けるためには、この高い増肉係数をどうにか低くしなくてはなりません。増肉係数の観点から生産効率が高い魚となるとサケ、ティラピアやコイでしょうか。

ブリやマダイ養殖をどうやって継続させるかは、実は日本の魚類養殖の存続に関わる大きな課題です。世界で多く養殖されているのは、コイ科、ティラピア、ナマズなどの淡水魚です。海面を使って、あまり効率のよろしくない肉食魚類の生産をしているケースはマイナーなのです。でも、日本人は海の魚が好きなんです!


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