魚の〆方について〜その1〜


養殖魚が出荷される時に行われている作業が、主に二つあります。
ともに鮮度を保つための技術(工程)です。
1. 血抜き(脱血)
2. 神経抜きや神経切断

今回はこのうち「血抜き」についてまとめてみます。

血液は摂取した栄養素を体の様々な部位に運ぶ重要な役割を担っていますが、
それが故に栄養を多く含んだ血液は、鮮度劣化を進めることにも繋がります。

そこで、血抜きの前に「餌抜き(絶食)」が行われます。
内臓に餌が残っていると、ラウンド出荷の際に臭いの原因になります。
なので、基本的には胃の中に餌が残っていることは避けます。
また、栄養成分が豊富な血液が身に残ると、やはり摂取した栄養素が腐敗を進めることになります。
これらを避けるため、餌抜きが行われます。

餌抜きは消化速度(水温に依存)によって、だいたい2〜3日くらいに設定されていることが多いです。
この餌抜きは重要なのですが、餌を食べていないと魚の体重は減ります。
重さで販売されるため、あまり長期に渡って行う事は損益に繋がります。

餌抜きを行って、出荷(〆作業)となります。
網ですくった魚の血管を包丁などで、鋭利に切断することにより脱血を行います。
文字で記すとなかなか伝わりませんが、出荷サイズのブリ(4kg以上)の力はとても強く、抑えることはとても難しいです。

血抜きは少し残酷なのですが、魚の心臓が動くことを利用して行っています。
(家畜類も同じです。)
血管を切り、そこから心臓のポンプで血液を押し出すといった仕組みになっています。
この血抜きをどのように行うかで、魚の体に残る血液の量が異なります。

的確に早く血管をきれいに切断し、海水(できれば常温)で長く行う。
(きれいに切らないと、血管が潰れてしまい、血の抜けが悪くなります。)
切断部位の血が固まってしまったらそれを取り除き、さらに脱血を促す。
といったことをすれば、かなり血を抜くことができますが、時間がかかります。

つまり、作業効率が落ちますし、血を抜けば抜くほど、重さは軽くなります。
重さで売られる魚にとっては、なかなか難しい問題です。

現在は、ラウンドで出荷される割合は減ってきており、フィレでの出荷が増えています。
そちらですと、おそらく軽くなった分も価格に反映されています。

「血抜き」、やれるならしっかりやった方が良い、でもそれは作業効率とのバランス。

百貨店・スーパーなどが血抜きをしっかりした魚を必要なら、
買い取り価格を高くすれば、対応するところもあると思いますし、
実際にレストランへの直送で、そうされている方もいます。

長くなったので、参考動画を付けて一旦ここで話を切ります。

とても丁寧な血抜きの参考動画(神経抜きもされています)
https://www.youtube.com/watch?v=-hfj0PH6EZY&feature=youtu.be

実際の現場で、ブリ1匹を〆る時間は手〆でも1~2秒くらいかと思います。
でないと数千匹の処理などできません。

手〆の動画は見つからないので、半機械の〆機
これだと、暴れる魚の制御もできて、しかもより安全。
https://www.youtube.com/watch?v=TiFwUZbo3SM&t=30s

さらに上の機械を全自動にした〆機もあります。

血抜きの動画は、画像として綺麗ではないため、あまりありません。
この血抜きがあるから、魚を美味しく食べられると理解して頂ければ幸甚です。

深田

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