海洋を考えるー質問への回答 その2―



今回はDHAブリ(三重尾鷲のトロぶり)と養殖全般について回答します。
ちょうど12日から全国のスシローで三重尾鷲シリーズが回っているはずです。
一度、食べてみてください!

1.マグロの増肉係数にEPでの数字が無かったのは、EPが無いから?
そうです。稚魚と幼魚用は開発されていますが、成魚用は一部でソーセージ状のMP的な餌が使われているのみです。基本、冷凍魚です。

2.ブリは完全養殖されていないのか?
技術的には可能ですし、一部で完全養殖されています。が、様々な理由から、天然モジャコを用いた養殖の方が今の所は主流です。

3.魚の品種改良について?
身近なのは、ニシキゴイやキンギョでしょうか?綺麗になるように掛け合わせをしています。同じ様に人工種苗の生産が可能な魚種では、良い形質を持った魚同士を掛け合わせています。農業でいちごを甘くする品種改良と同じです。
魚も個性がありますので、太りやすさなどには個体差があります。内臓が丈夫(大きい)だと、大きくなる様に思います。

4.養殖で目新しいこと
愛媛県で大ぶりといって、大きいブリの生産に取り組んでいます。区画漁業権に関わらない陸上養殖が大規模で始まります。千葉県の木更津市と三重県で始まるようです。片方は国内企業、もう一方は外資系です。

5.提携先の探し方
 地域協働学部の方から多かった質問です。初めは闇雲に連携してみるしかありません。そうするといつか良い方に巡り会います。良い方は良いネットワークをお持ちのことが多いので、広がりも早いです。相性や運もあるので、なんともいえませんが、「出会いの機会を増やす」、「自分自身が認められる人間になっておく」といったことが重要かも。友人や恋人と同じですね。

6.  DHAの蓄積
ブリは冬に脂肪を蓄積します。DHAも脂肪となってブリの体に蓄積されます。柑橘の香り成分も恐らく同じ仕組みで蓄積されていると思います。

7. カツオやサンマの養殖はないのか?
サンマはコスト的に利益を出すのが難しいと思います。また、稚魚の確保が難しいかも。カツオの養殖については、採算度外視で高知県でやれば良いのにとは思っていますが、こちらも技術というよりはコストの面で難しそうです。

8. DHAブリでEPAは増えないの?
餌の組成をほぼ反映していると考えています。その他、考えられることはありますが、それは私の専門の授業【3年生】で学んでください。

9. 餌抜きのメリット
鮮度が保持できます。臭いを減らすことができます。餌を消化している時は体の活性が高くなり、それが鮮度保持にマイナスとなります。絶食すると、体がセーブモードに入り、分解等が抑制され、結果として鮮度も保持されます。けれど、長すぎる絶食は逆の現象が起きるかも。

10. 鶏糞の様に魚の糞は使えないのか?
養殖は主に海面で行われるので、まず回収が非常に困難です。そして塩分を含むので、脱塩をしなくてはなりません。使うまでの行程が多すぎます。

11.ノルウェー産のサーモンの方が、チリ産よりも美味しい。
ノルウェーは大西洋サケ、チリはギンザケ、と種類が違います。そして、ノルウェー産はどなたかが指摘してくれた様に冷蔵で輸入されますので、やはり、それは重要なポイントです。

12. 養殖魚がトラブルで死んだとき、生産者の収入は?
だいたいの方は保険に入っています。そうで無い方は倒産の危機になります。あまりにも甚大な被害な場合には特別に予算が組まれて、救済されることもあります。

13. 先生の野望は?
以前は、日本のブリ養殖生産地すべてと繋がることでしたが、今は違います。
今は、やる気のある、優秀な学生とブリに関する研究を進めることが一番のやりたいことです。学内委員の任期が今年度で終わるので、来年からは大学院生と研究をどんどん進めたいと考えています。

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