魚粉含量に惑わされないで



現場を見て回ると、安い値段のわりに魚粉含量の高い餌を見かけます。
魚粉は餌の主成分であり、ブリの場合、成魚になっても40%程度を占めています。

稚魚や幼魚の場合では、含量はさらに多く、70%以上になることもしばしばです。

この「魚粉」ですが、今、世界中で取り合いになっています。
特にペルーアンチョビが良質なものとして取引されることが多いです。
近年、ペルーは資源管理をしっかりと行っており、
資源評価によって漁期における漁獲量が定められます。

漁獲量が少ないときには、魚粉価格が高騰します。

そのため、最近では原料の調達経路が様々となっており、
アジアやアフリカからも輸入を行っています。
さらに加工残渣やいろんな魚で成分量を調整した調整魚粉というものもあります。

良質なペルーアンチョビを豊富に使えた頃は、
「魚粉含量=成長の良い餌」が成り立ちましたが、
近年では配合に使用している魚粉の品質が様々になっているため、
この図式が必ずしも成り立ちません。
それと、低魚粉飼料の開発も進んでおり、
給餌方法等を検討するとなかなか良い餌も増えていると聞いています。

しかしながら、困ったことに古くから養殖をされている方や、
不勉強な生産者は「魚粉含量」に惑わされてしまい、
性能はわからないけど魚粉含量の高い餌を選んでしまうことがあります。
そういった餌には調整魚粉が使われていることが多く、価格も安いんです。

こうしたことを避けるためには、どうしたら良いか?
飼料会社も餌を売るために必死です。
ただ、値段は性能を反映していると考えて、だいたい間違いありません。

質の悪い餌をみつける方法は下記になります。
1.  飼育日誌をきちんとつける。(給餌量をきちんと記録する)
2.  増肉係数を定期的に算出する。(そのため、飼育尾数と魚体重を定期的に把握)
3.  増肉コストをきちんと計算する。(1 kgあたりの増体に対して、飼料の費用がどれだけかかったかを把握)
4.  できれば、餌ごとに生け簀を分けて他メーカーまたは他銘柄の飼料を使い、比較する。

必ずしも調整魚粉が駄目ではないことも確認しているので、一概に言えませんが、
餌の表示からもなんとなく魚粉グレードを察することができます。
5.  (ちょっと高度)飼料の魚粉含量とタンパク質含量・灰分含量をチェックする。
(魚粉が主体ならば、タンパク質含量を魚粉含量でわると魚粉のグレードを察することができます。灰分についても調整魚粉だと多めになる傾向があります。)

増肉係数=生け簀あたりの給餌量(kg) ÷ 生け簀あたりの増えた魚体重(kg)
増肉コスト=増肉係数 × 餌の価格(kg単価)

これらは面倒と言われる方も多いですが、きちんとした生産者は必ず行っています。
飼料メーカーと交渉するためには、主観ではなく「客観性」が必要なのです。
そうすれば、飼料メーカーも餌の異常等にも気づくことができますし、
結果的には双方によい効果をもたらすはずです。

自分の経営は自分でしっかり行う。

意外とできない方を目にすることが多く、
あまり品質の良くない餌を購入し、魚の成長が悪く出荷に支障をきたしたり、
増肉コストが結果的に増えていたりして、経営状態を悪くしているかたを見かけます。

定期的な魚体重の計測は、経営をきちんとするならば不可欠と考えます。(深田)



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