現在の魚類養殖におけるシビアな状況について

4月より大幅な餌の値上げが予定されています。
その原因は、主たる原料である「魚粉」の値上がりです。

値上げ幅は餌1kgあたり50円程度と言われています。

これを基にブリのエサ代がどれくらい増えるか計算してみます。
ブリの増肉係数は、2.8と仮定します。
そして現在の餌の価格を200円/kgとし、値上がり後を250円/kgと設定します。
(増肉係数はブリが1kg太るために必要な餌の量を示しています。)
勉強にはここが参考になります!
http://www.jfa.maff.go.jp/e/annual_report/2013/pdf/25suisan1-1-1.pdf

出荷時の大きさが5kgだとすると、5(kg) x 2.8 =14kg となり、1匹当たりで14kgの餌を用意せねばなりません。1つの生け簀にブリが4000匹いるとなると、4000() x 14(kg) =56 トンの餌がいります。すごい量ですね。

これから餌の値上がりを考えると、5kgのブリ1匹当たりで 14kg【必要な餌の量】 x 50円【値上げ分】=700円の経費増です。1つの生け簀で、2,800,000円の経費増になります。生け簀が10基あれば、28,000,000円の経費増です。経営の面でかなり厳しい状況になります。

では、どうすれば良いのか
1) 一番簡単なのは、魚がそのぶん高く売れれば何も問題ありません。でもそれはかなり難しいです。しかも価格の相場は、生産原価に関係無く上下します。

2) 育成方法を改善し、増肉係数を下げる(改善する)
  仮に2.82.7に改善したらどうでしょうか?【魚の数は4000匹で出荷サイズは5kgとします】必要な餌の量が56トンから54トンになり、2トン分の餌代が浮きます。生け簀1つで50万円、生け簀10台で500万円の経費削減になります。増肉係数が0.1さがることで、生け簀あたり50万円ずつ経費を節約できます。


 
200円
250円
2.856t
11,200,000
14,000,000
2,800,000
2.754t
10,800,000
13,500,000
2,700,000
400,000
500,000
100,000


3) 種苗を改善し、増肉係数を下げる
人工種苗で選抜育種することで、育成の効率が良い系統を作ること。
選抜育種をした大西洋サケでは、増肉係数が1.2までになっています。(ただブリではそこまで下がらないとは思います)

4) 魚粉の代わりに安い原料を使って、従来の餌と成長が変わらない餌を作る
これが研究の面で一番求められていることですが、まだまだ従来の飼料に及ばない点があります。

これら+αで多角的に取り組めば、魚粉の値上がりに対して有効な方法になると思います。しかしながら、一朝一夕にできることではありません。さらには基礎研究と現場を繋ぐためには双方の理解を深めることも不可欠かと思います。

きちんとしたものを生産するとなると、安くはできないことを消費者側も理解することも必要です。

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